ショッピングセンター内の5m四方程度の仮設展示空間を想定し、その構造をスタディしてみました。大きな部材が不要で1本1本の材料が軽いこと、組み立てや解体が容易なこと、丈夫なこと、県産の木材が利用でき、子供にも親しみやすい空間であること、そして何よりも安くできること‥‥。
多角形をずらして組み合わせ、三角形が連続するようにしてアーチをつくるシザースアーチ形式の骨組みで中の柱をなくし、それぞれの骨組みの間に展示壁としても利用できる構造用合板を張って、反対方向の力にも耐えるようにしてみました。
日本のもりでは、戦後に植林されたスギやヒノキが成熟し、直径が22~28cmの中目材(なかめざい)や、30cmを越える大径材の出材が増えており、それらの有効利用法を探る時期に入っています。そこで、要所の柱にはヒノキの180mm角、梁にはヒノキの成(せい:梁の高さ)が300~360mmの材など、骨太な材を大らかに用いた住まいを計画しました。外周部は貫を用いた高倍率の耐力壁で、一方内部は壁のないラーメンフレームで構成されています。伝統的な耐力要素だけを使った地球にやさしい構造方法を採用しています。いわば自然素材だけを使った超-伝統工法(構法)の試みです。以下は軸組模型の写真です。(模型製作:2015)
新たな架構(構造方法=骨の組み方)を生むためのSTUDY(習作)や、計画案についてご紹介します。
下の模型はいずれも、東京大学農学部木質材料学研究室で学園祭(5月祭)に合わせて毎年行われる、学生達自らが加工・組み立てをする仮設パヴィリオンのコンペに参加・提出した案です。
年ごとに、「木をずらして重ねる」、「木や合板をかみ合わせてつくる」といったテーマが与えられ、コンペで1等になると実大の構造物をつくることができます。ただし、自らが施工・解体までを行い、また予算の制約もあることから、施工性、構造合理性、デザイン性、コストなど総合的な判断や回答が求められます。学生たちが建築的なものや素材に直に触れる良い機会であり、わたしたち実務者にとっても、架構のヒントを得、柔らか頭にするための絶好の機会です。
柱の上下端部の突起状の部分である「ほぞ」を厚く・長くすることによって、耐力壁がなくても地震などの外力に耐えられるようにする住宅の計画案です。柱は120mm角のヒノキ材。梁(はり)や桁(けた)などの柱以外の構造材も、120mm角にそろえ、住宅空間に統一感を獲得することを目指したものです。(2009)
材料実験や構造実験に立ち会い、ものが破壊する様子を目の当たりにすることは、とても有意義なことだと思います。粘り強さやもろさなど、材料や構法の持つ強度特性がわかり、(限界以上の力が作用すれば)「ものは壊れる」という当たり前のことに気づくことができるからです。そして何よりも、その事実を前にわれわれ人間は、謙虚になれるのではないかと思うからです。
下のリンクは、平成24年度に委員として参加した「伝統的構法の設計法作成および性能検証実験検討委員会」で実施された、上部構造は同じで、足元の留め方の異なる2棟の実大建物(試験体)に、阪神淡路大震災で得られた地震波を入力した試験の様子です。
H26年度、栃木県の補助をいただき、大谷石を用いた木造耐力壁の開発のための事業に参加しました。
埋蔵量が限られているとはいえ、出身地である宇都宮市の活性化にひと役買えればと考えています。
以下に、製作の状況と実大(部分)試験体の面内せん断試験の様子を示します。