茨城県古河市の私立幼稚園。老朽化した鉄骨造の旧園舎を解体して新しい園舎に建て替えました。軽い建物にして地盤への負担を減らすこと、きれいな空気や温かみ、園児の集中力アップなど木の素材力の教育への効用面に期待したこと、園の木製教具との相性がよいことなどから、木造の園舎で計画したものです。その際、住宅用に普及していて割安な流通製材を骨組みに使って経済性を担保し、外壁の雨のかかりやすい部位は無理をして木を張らないなど、メンテナンスしやすく長持ちする木造園舎を心がけました。
日当たりの良い南東側に開いたL型のプランで、保育室の日照と風通し、職員室からの見通しや防犯性、遊戯室の高さと開放性、各保育室の独立性の確保に努めています。各保育室の独立性を保つ一方で、園全体の一体感や保育室のつながり感を高めるために、大きなひとつながりのゆるやかなRの屋根を掛け、内部には、メンテナンスにも役立ち構造的な役目も兼ねるキャットウォークを挿入しました。
またあまりにも木が見えすぎてしまうと、園児たちではなく木が主役になりかねず、コストアップに繋がる場合があることから、園児たちが集中しやすいシンプルな空間づくりを目指しました。住宅用の製材は保育室の大きさを確保するためには十分な太さがないことが多いため、構造設計者の協力を得ながら、骨組みのつなぎ方やつくり方、組み方などに工夫をこらし、空間の静かさと経済性を両立しました。
そして建物の地産地消の観点から、構造材には茨城県産の木材を100%使用し、「いばらき木づかいチャレンジ2018」の補助金を活用して建物の整備を行っています。
飯田貴之建築設計事務所と共同設計 写真:中山保寛