くらーす 2017 .07

炭焼き小屋、ふつうの家、合板打ち放しのローコスト住宅など、約20年にわたる北茨城計画の総仕上げとして計画した、ロフトも設置予定の平屋建ての住まいです。敷地内で物置として利用していた6坪の板倉をクレーンで吊り上げて移設し、それを仕事場兼個室として再利用する方針が決まったことから、この計画はスタートしました。既存の板倉のまわりを新築部分がとりまく構成で、25坪程度の床面積を確保しながら、とにかくコストを抑えることを目標にしました。内壁と天井は石膏ボードのあらわし仕上げとしてコストを削減し、外壁は板目調のサイディングを新築部分に、杉板のタテ張りを倉部分に用いることで、あえて本物とフェイクを並置しています。石膏ボードのやわらかな色合いの中に、時を経て黒く存在感を増した板倉が、お金では買えない時間の貴重さを体現しています。使い勝手の良さはもちろん、板倉のかたちに合わせた天井の高いリビングと、屋根の形をあらわした勾配天井のキッチンや和室など、部屋同士のつながりを持ちながら広がりや大らかさを感じやすいような設計を心がけました。そしてこれから、造園家の建て主が少しずつ外構工事を行っていくことではじめて、「くらーす」と「北茨城計画」は完成することになります。